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現時点で生産しているかどうかは分かりませんが、注文すれば入荷するようなので珍品というわけではありません。でも、実に変わった品です。
そして私がずっと欲しかった万年筆です。
ヴィスコンティ ホモサピエンス マリンスティール オーバーサイズ(極細字)。
機構的に変わっている点はまずホックセールロック式キャップ。
首軸に5カ所溝が掘られており、キャップ内部には5つの突起。
この突起を溝に合わせて少し押しつけながらくるっと5分の1回転させて開け閉めします。
やりにくそうですが、クリップの真下に突起があるので、クリップを溝の位置に合わせれば割とすんなり入ります。
気密性も悪くはありません。
次いでダブルタンクパワーフィラー式というインク吸入方式。
パイロットのカスタム823やツイスビーのVACなどで採用されているプランジャー吸入式と同等ですが、
ヴィスコンティはリザーブタンク付きで、インク止め機能は無いため、尻軸を緩めなくても筆記できます。
で、インクが無くなったら尻軸を緩めてリザーブタンクを開ける仕組みです。
吸入後の重量が2gほど増えていましたから、かなりの量のインクが吸入できます。
そして何と言っても変わっているのが使っている材質。
まずニブ(ペン先)は23KPd 950(95%のパラジウム)。
現行品でパラジウムニブは、ヴィスコンティしか採用していません。
金が高騰し、安定した価格での提供が難しくなったことから、2010年頃からパラジウムを使っているようです。
2つめは装飾リングで、これは造船用の鋼(マリンスティール)を使用しています。
これ以外に青銅(ブロンズ)を使用したタイプもあります。
普通は鉄鋼なら錆びにくいステンレススティールを、銅合金なら加工しやすい真鍮を使い、メッキを掛けるのですが、
これはあえてマリンスティールや青銅を使っています。
そして軸の材質。何と、玄武岩質の溶岩なのです。
シチリア島のエトナ火山から掘り出した溶岩をくり抜いて軸にしているようで、こんなことをするのはヴィスコンティくらいのものでしょうか。
そもそもホモサピエンス(現生人類)という品名自体も変わっていますね。
この変わった名前と材質には関連がありまして、溶岩は地球の誕生を、ブロンズは青銅器文明を、マリンスティールは鉄の文明を表し、
そしてそれを筆記具に仕立てることで、字を書くという文化を獲得したことを表しています。
ブロンズもマリンスティールも錆びる材質ですので、普通はこんな物を無垢のまま使いません。
でもそれをやっちゃうところがヴィスコンティらしいです。
要するに際物???
いえいえ、ヴィスコンティのパラジウムニブはドリームタッチと呼ばれ、最近の万年筆には珍しくよく撓り、書き味は柔らかく滑らか。
非常に上質です。
太くて重い万年筆ですから誰にでも合うとは言いませんが、私みたいな変人には実に魅力的な万年筆です。
2016年2月にイタリアの老舗・OMASが廃業したのは記憶に新しいですが、
2018年2月、今度は1982年創業のデルタが廃業・・
昨年7月から休業していましたし、経営状態は厳しいとの情報はありましたが、
ついに・・・というかやはり・・・
この美しいドルチェビータも、もう手に入らなくなるのか・・
無理して入手しておいて良かった・・けど、大きな故障にはもはや対応できない。
大事に使わないと・・(国内で修理可能なものは、輸入代理店がきっちり対応するそうです)。
(写真:デルタ ドルチェビータ スリム バーメイル)
まあ、イタリアの筆記具は無駄に綺麗で無駄に高い。
ドルチェビータも綺麗なオレンジで、女性ならともかく、男性が仕事で使うような物でもなく、
実用品ならパイロット、セーラー万年筆、プラチナ萬年筆から手ごろな価格のが沢山出ている。
外国製でもパーカーやペリカンの方が実用性は高そう。
イタリア製は趣味性が高く、家でニマニマしながら日記を綴るという、
変態的な趣味にはもってこいなのに、やはり趣味の域からは出づらい。
日本では特に女性に人気のあったブランドですが、経営的には厳しかったのですかね。
こういう万年筆が大好きな私にとっては寂しい限りです。
私の大好きなヴィスコンティは大丈夫かなぁ?
金持ちが道楽でやっているようなメーカーなのであまり心配はしていないですが、
私がホモサピエンス ブロンズを手に入れるまでは頑張ってくれ・・
いや、ホモサピエンスはパワーフィラー式だから、修理が必要になった時に潰れていては困るな。
字を書くのなんか100円のボールペンでも十分だし、
プラチナ萬年筆の200円の万年筆も結構使える。
やはり高級万年筆なんて物は、ほぼ趣味の物なんだろうなぁ。
仕事で必要なのは、ビジネスマンがシックで高級そうなボールペンを使ったり、
契約書にサインを求める際に、高級なペンを渡すくらいのもので、
今万年筆が流行っているとは言っても、全体的には厳しいのかもしれない。
銀座の伊東屋とか、いつ行っても客が大勢入っていて、ゆっくり品定めする雰囲気ではないのに・・。